■ついにセブンイレブンが植物工場に参入
昨年12月にヤフーのトップニュースになったのでご存知の方もたくさんおられると思いますが、これは本当にすごいニュースです。
記事の一例 他にも各社報道しているので調べてみてください。
2018年における植物工場関係で最大のビッグニュースと言っていいと思います。
技術面、販売面ともにさすがセブンアンドアイさんだなと思います。
実はこのニュースについて記事を書こうと思っていたところ、youtubeで植物工場に関係する騒動が起こってニュースになり、そちらの記事を先に書いた結果、本記事の執筆が遅れてしまいました…。
話を戻します。
このニュースは販売面の優位性がすさまじいのですが、技術もすごいです。
■技術がすごい
播種の自動化はいろいろ方法がありますが、播種だけでなく定植も自動化されています。
上記リンクを見て察することしかできませんが、おそらくスペーシングも自動化されています。
どういうことかというと、この植物工場システムでは栽培時間が経過して植物が大きくなっていくにつれ、自動的に隣の株との距離が離されていく仕組みになっているように見えるということです。
従来の水耕栽培はあらかじめ定植間隔が決められたパネルに苗を植える仕組みでした。
そのため植物がまだ小さい初期には無駄に大きな間隔があいた状態になっており、光や面積を莫大に浪費しています。
何度か植え替えて徐々に間隔を広げることによってこのロスを減らす方法はありましたが、そのたびに人手がかかります。
しかし自動的に間隔を広げていけば、植え替えの手間は要りません。そうすると、光や面積のロスが無くなります。
光の波長がどうとかいうよりも、スペーシングを最適化したほうがはるかに生産を効率化を促進してコストを下げられる余地があるのです。
それくらい従来の固定間隔での定植は無駄の極みでした。
実はスペーシングの自動最適化方法については6年ほど前に私も思いついたのですが、機械まわりの知見に乏しく、コストもかかりそうなので試していませんでした。「かかりそう」とか「苦手」ではなく、ちゃんと試してみるべきだったとリンクの写真を見て大いに反省しました。
全く別の観点からあまりコストがかからない自動スペーシングの方法も考案していて、それはすぐ試せますし恐らくうまく行くと思います。特許も取れるでしょうが、同時にいろいろ欠点や課題があるので着手していません。
ともかく、本件の植物工場は技術も非常に「イケてます」。
私が昔からセブンイレブンが一番好きなコンビニであることを除いてひいき抜きで平等に見ても、非常に素晴らしい事業だと思います。
技術・販売の両面で優れており、ぐうの音も出ません。これならたとえレタスを作っても相当儲かるでしょう。
もちろん初期投資額次第な面もありますが。日産3万トンのレタスを作るために100億円も投資していたらどうにもなりません。
まあ、セブンさんがそんなバカげた投資をするとも思えません。
いまだにほとんど植物工場の成功事例がない状況ですが、この植物工場は高い確率でうまく行くのではないかと思います。
技術面でひとつだけ気になったのは、赤色LEDが光っている写真を見たことです。
赤色光は労働者の目に対して相当な負担になるはずなので、心配です。
しかし「高度に自動化しているため人がほとんどいらない」であろうことに加え、白色LEDの写真もあったことから、「作業時は白色LEDのみ点灯する」という工夫がなされているようにも思えます。それなら安心です。
■販売面のすごさ
販売面の何がすごいかについて。
セブンイレブンさんが最高の条件を2つもそろえてレタスの植物工場を始めたので、改めてこれから植物工場をやる人にはもうレタスなんか絶対作るなと言いたいです。
「植物工場でレタスを作って儲かるのはこういう場合だ」という証明をしてくれることと思います。
どうしてもレタスをやるなら、セブンさんに勝てるくらいの条件があるか顧みてからにすることをお勧めします。
セブンさんは植物工場で儲かるための最高の条件を2つ持っています。
■自社の販路を持っている強み
一つ目は「自社でレタスの販路を持っている」ことです。そのうえ、尋常ならざる規模です。
これによって、法人全体で考えれば
小売り側にとっては生産コスト=仕入れコストとみなすことができ、
生産側にとっては販売価格=末端価格(最終小売価格)とみなすことができます。
仮の金額ですが、比較してみましょう。
【通常】植物工場で80円近くかけて作ったものを10円の出荷梱包コストをかけて100円で卸して、スーパーは140円で売る。
植物工場の事業者は1株10円の利益、(スーパーは1株40円の利益)
【本件】植物工場で(機械化による人件費削減やスペーシングによる省エネで)70円で作ったものをすでに完成された低コストの配送網で5円以下の出荷梱包コストで出荷し、店舗で175円で売る(コンビニなので高めに売れる)
結果、1株販売で100円の利益になります。
事業全体でみなせば、最低の仕入れ額でレタスを仕入れ、最高の価格で販売できることになります。
■加工できる強み
これは後日別の記事で詳しく書きますが、作物はそのまま売っても儲かりません。加工すれば一気に儲かります。
加工と言っても乾燥したりゆでたりやいたりと様々ですが、最も低コストで短時間に効率よく農作物の値段を上げられる加工はなんと「カット」です。
1玉100円のオレンジの3回カットしたらいくらで売れるでしょう?
1玉300円のパインをカットしたらいくらで売れるでしょう?
1玉200円のキャベツをカットしたらいくらで売れるでしょう?
調べてみてください。驚愕ですよ。
少なくとも2割増し、モノによっては2倍近い販売価格になります。それでも売れるのです。
100円で売るために2か月かけて作られた葉ネギを、刻んで売るといくらになるか。そのカットにかかる時間は?
恐ろしいことに、種から作物を作って育てるよりも、育った野菜を仕入れてカットするほうが圧倒的に短い時間で高い付加価値を出せるのです。
セブンさんはレタスという野菜そのものではなく、カット加工したサラダとして出荷できるのです。
ひたすらレタスそのもので売る場合に比べてさらに2~5割増の価格で販売できるでしょう。
ちなみに、赤のみや青のみといった単色光を使って植物を育てると形がおかしくなることが多々あります(形態異常)。
なので、レタスとして売る場合は単色光の使用は難しい面があります。
形が悪いものは商品性が下がり、安くなったりそもそも売りものにならなかったりします。
しかし、カット野菜なら多少形がおかしくても大丈夫です。
規格外野菜なんかもカット加工して有効利用されることがあります。
形がおかしいだけなら、食べる分には何か問題があるわけではないので。
本件は上記にあげた2大条件のほかに、大口の電力契約による電気代の削減もメリットになります。
また、少しだけ触れましたが、自前のコールドチェーン配送網の利用(範囲の経済)が可能です。
そして絶大な資本力とブランド力があります。
植物工場でレタスを作って儲けるとはこういう強力な条件をしっかりそろえることです。素晴らしすぎます。
これからの植物工場はどうかこうあってほしい。
儲からない植物工場なんかいくら作っても環境破壊や億単位の補助金(税金)の無駄遣いにしかならず、社会悪でしかない。
やるからには独自の強みと意味がある、儲かる植物工場を目指すべきです。
植物工場でレタスをやるなら、これくらい好条件をそろえるか、もしくはレタス以外の道を探すべきです。
そして何を作るにしても、何らかの加工をしてから出荷しましょう。
繰り返しになりますが、加工については後日改めて記事を書きます。

