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先日、植物工場で結球レタスが作れるかどうかというご質問をいただきました。 答は「作れます。」 ただし植物工場で結球レタスをつくるのは決しておすすめできません。 ■レタス類の市場規模 現在、植物工場では主にリーフレタスが作られています。 リーフレタスの市場を東京中央卸売市場の市場統計に基づいて推定すると サニーレタスが推定約390億円 グリーンリーフレタスが推定約240億円 その他のマニアックなリーフレタスが推定約100億円 です。これらをすべて合わせると730億円。 一方、結球レタス(普通に「レタス」と呼ばれているものです。)の市場は推定1460億円。 結球レタスの市場は、結球レタス以外のあらゆるレタス類のちょうど2倍あります。 この数字を見ると結球レタスのほうがリーフレタスよりも圧倒的に大きな需要があるので 売りやすいのではないかと考えられます。 実際、結球レタスのほうがよく売れますし売りやすいです。 では、植物工場で結球レタスで作ったらどうか。 そもそも植物工場で結球レタスは作れるのか? 実は、植物工場での結球レタス生産自体は何年も前に成功しています。 しかし、いまだに実用化されていないところを見ると様々な問題があるものと思われます。 すぐに思いつくのは栽培長期化に伴うチップバーンの発生や歩留まりの低下など、技術面の難しさです。 なにより大きいのは電気代のさらなる上昇です。 リーフレタスでさえ赤字になるので2倍かそれ以上の栽培期間を要する結球レタスの生産となると、 さらに厳しくなるでしょう。 多段階育苗や反射板の工夫で電気代を抑える工夫をしても超期間化という致命的な問題を克服するのは困難だと想像できます。 ■価格面の問題 なんとか結球レタスの生産技術を克服できたとしても、もっと大きな壁があります。 生産コストを考えると、1玉1000円くらいで売らないと採算が取れないでしょう。 しかし、露地の結球レタスの平均市場価格はわずかキロ185円です。 1個平均500gとして1個90円ちょっと。これが日本の結球レタスの平均価格です。 段ボールや送料を支払って出荷して、売値の10%弱の市場手数料を支払って…。 恐ろしいことに、「露地栽培×家族経営」ではこれでもちゃんと利益が出るのです。 そして結球レタスに限らず日本の農作物のほとんどが「露地栽培×家族経営」という、 究極のコストカット条件下で生産されています。 家族経営とは、人件費をゼロとみなすことができる恐ろしい計算方法ですが、 日本の農業ではむしろ家族経営のほうがメジャーです。 経営の観点から考えると信じられないことですが…。 そのうえ、最低賃金を割っても耐えられる年金受給層にある生産者が多数存在します。 植物工場で露地モノとやりあおうとするなら 人件費ゼロで作られた作物にも勝てるくらいの優位性・勝算が必要ということです。 植物工場は露地にできないことができるので、あえて露地でもできる作物とやり合う必要がそもそもありません。 植物工場では露地とは戦わないという選択肢が大前提として非常に重要になります。 何か特別に有利なことがない限り、「露地栽培×家族経営」と競ってもまず勝ち目はありません。 また、1年のうち露地ものの結球レタスが1玉60円以下になっているような時期もけっこうあります。 そういう時期はさすがに「露地栽培×家族経営」でも赤字になります。 このような条件でありながら、毎日4億円以上もの結球レタスが出回っています。 基本的に日本の農作物は供給過多で、常にすさまじい値崩れを起こしています。 年に何回か不作が起こって「○○が高騰している」なんてニュースが流れますが、 むしろ高騰しているときの値段が本来の適正価格だと思います。 ■勉強くらいはしておく価値あり ただ、農業の高齢化は著しく、ある段階で担い手が一気に減ると考えられます。 徐々に生産量が減少し、価格が適正化されるか、あるいは急激に高騰していく可能性もあります。 それがいつになるかはわかりません。 現状では植物工場で結球レタスを作っても、営利事業として成立させるのは非常に厳しいと思います。 少なくとも私には植物工場の結球レタスが露地栽培×家族経営に勝てる要素は何も思いつきません。 安定出荷は植物工場のメリットの一つかもしれませんが、 露地野菜全体でみれば産地をずらした「リレー出荷」により結球レタスとリーフレタスの周年供給網はすでに完成しており、 早朝に卸売市場にいけば結球レタスやリーフレタスは必ず手に入ります。 とはいえ、何かに備えて植物工場での結球レタスの可能性について勉強しておくこと自体は無駄ではないと思います。 以前ご紹介したように、離島でコンテナ型植物工場を使ったリーフレタス生産の収益化事例もありますし。 こちらの記事を御覧になれば結球レタスの人工光栽培の全容が把握できます。 もし興味があればぜひどうぞ。 ■植物工場で生産した作物は死ぬほど売りにくい 何を作るにしても、植物工場で生産した作物は死ぬほど売りにくいです。 何とか売れても店頭でなかなか売れないので契約が持続しません。
ここにも植物工場が失敗する根本原因があります。 生産を一切やらずに、営業専門の会社が販売だけやってもなかなか売れないくらい植物工場の野菜を売るのは難しいのに、 植物工場を始めたら生産しながら販売もやらないといけない。 この二重苦は想像を絶します。だから、決して大きな規模でスタートしてはいけないのです。 まずは小さく初めて、試験栽培とサンプル生産をします。 作ったサンプルを無料配布して品質を挙げながら、販路を少しずつ広げていかないといけない。 それなのに「スケールメリット」を合言葉に信じられないほどの大規模でスタートして、 ただでさえ困難な販売のハードルをさらに上げてしまっている。 大量の植物工場野菜をさばき続けないといけないスケール「デ」メリットのほうが、 スケールメリットよりもはるかに深刻で対応不可能な課題になります。 そうではなく、販路に合わせて少しずつ生産規模を拡大するべきです。 植物工場を自作すればそれが可能になります。 規模を2倍にしたところで導入コストは20%も安くなりません。 一方、資材を自分で調達して自作すれば同じ規模のままで50~70%安く導入できます。 スケールメリットのために規模を大きくしても販売をさらに難しくして成功率を下げるだけです。 植物工場で生産した作物はとても売りやすいはずのレタス類ですら売りにくいです。 なぜならレタス類は1年のうち半分以上の時期ですでに余っていって値崩れしていて、 その相場よりも何倍も高い値段で1年を通して売り続ける必要があるからです。 結球レタスが売りやすくて大きな需要があるのは露地の平均価格だからであって、 1玉1000円ならものすごく売りにくいし需要も限られるでしょう。 リーフレタスやサニーレタスにしたって、 1株300g前後の大株が150円くらいで買える時期が年の半分くらいあるからこそよく売れているのです。 その隣に1株80gで198円のリーフレタスを1年じゅう並べて20年間売り続けられないと、 植物工場でリーフレタスを生産しても初期投資を回収できません。 そう考えると、植物工場でのリーフレタス生産を収益化するのがどれだけ困難な挑戦であるかも、 これまでほとんどすべての植物工場がなぜ数年で倒産してしまったのかもお分かりでしょう。 つまり、既存の需要から入って作る作物を検討してもほとんど意味がありません。 露地の生産条件の価格だからこそそれだけ大量の数がさばけて、それだけ大きな金額に膨らんでいるのです。 もちろん、植物工場で作った作物を露地と全く同じ値段で売って利益が出せるのなら話は別ですが。 植物工場で何を作るにしても相当な営業力が必要になることは避けられません。 そこまで頑張ってレタス類を売っても報われないのではないでしょうか。 どうせ営業力にものを言わせてとても売りにくいものを頑張って売ることになるのなら、 いまの市場の大きさは無視してしまったほうがいいでしょう。 むしろ国内では自分たちしか作っていないようなマイナー作物を作って 販路を拡大していったほうがはるかに大きな可能性と将来性があるはずです。
■「レタス(リーフも結球も)だけは絶対に作らない植物工場」が当たり前になれば植物工場は収益化していく 本サイトではこれまで何度も繰り返しお伝えしていますが、 どうしてもこれから植物工場を始めたいのであれば、もうレタスからは離れることをおすすめします。 もしもレタス類で勝てるとしたら… たとえば1KWhあたり10円程度で使えるような激安の電力が使えるような 業務用電力特別高圧契約で月に何億円も電気を使用しているような電気の超大口需要家でもない限り、 あるいは1皿500円以上のサラダを毎日大量にさばけるような高級総菜屋さんや飲食チェーンでもない限り、 植物工場でレタス類を作って収益を上げることは困難だと思います。 実際、植物工場の数少ない成功事例はこのどちらかです。
そして、もしもレタス類でも収益化できるくらいの絶大な強みがあるなら、 ほかの作物で同じことをすればさらに大きな収益を実現できるはずです。 たしかに技術的には植物工場とリーフレタスの相性は好ましいです。 しかし、市場条件面で考えると植物工場とリーフレタスの相性は最悪です。 それにもかかわらず、技術に合わせてリーフレタスをやってしまう。 ここに植物工場が何十年も前から失敗し続けている根本的な原因のひとつがあると思います。 あえて、わざわざ植物工場でリーフレタスを、まして結球レタスをやってしまってもいいのか、 もう一度よく考えてみてください。 もっと希望のある作物が、期待できる作物が、植物工場との相性がいい作物が、ほかにあるはずです。
植物工場にまだ誰もたどり着いていない勝ちパターンが眠っているとしても、 それは結球レタスやリーフレタスではないでしょう。 そこに成功パターンがあるなら今のように悲惨な状況にはなっていません。 植物工場での成功は、 供給が不安定なマイナー作物を安定生産したり、露地では作りにくいものを作ったり、 大半の農家にとって売るのが困難な作物を作ったりして、 営業力を行使してそれらをうまく売って販路を広げていった先にあると思います。 もしも「最近植物工場の成功事例が増えてきたな」という時代が来たとしたら、 その時には植物工場でレタス以外の作物を生産するのが当たり前になっているはずです。 ■では何を作るか? レタス類を全面禁止するなら、いったい何を作ればいいのか。 「卸売市場ではまともな値段がつかないもの」は一つのヒントでしょう。 多くの農家にとってそのような作物は換金が困難だからです。 市場出荷では割に合わない作物、たったそれだけのことで9割以上の農家と競争しなくてよくなります。 観葉植物の例ですが、例えばジュエルオーキッドやアグラオネマのトリカラーはそういった作物です。 食べ物だとにんにくの芽もそういう作物です。 あるいは周年出荷網がまだできていない作物、つまり 「産地が国内に数か所しかないため、供給が途絶える時期がある作物」や 「旬の数か月しか出回らない作物」も可能性があるかもしれません。 イチゴなんかは後者に該当しますね。 日本には植物工場でのイチゴの周年生産に挑戦している方もいます。ぜひ頑張っていただきたいです。 あるいは出荷が安定しないマイナー作物。このような作物は市場出荷自体はできるものの、 価格が日々乱高下し、出荷量が大きく変動します。たとえばハーブ類が該当します。 ちなみに最近だとスナゴケ(緑化資材)の成功事例があります。 着眼があまりにも素晴らし過ぎて、敬意を抱く限りです。 スナゴケは緑化や造園で大きな需要がありますが、 露地栽培では成長が極めて遅く、生産者もごく限られているため供給が不安定であり 市場には評価されず、市場出荷では換金できない作物です。 つまり技術面、市場条件ともに、植物工場との相性はきわめて良好です。 イチゴは冬に集中して出回り、それ以外の時期はほとんど流通しません。 時期をずらして出荷すると恐ろしい高値になります。 また、日本のイチゴは世界一おいしく、海外では容易に作れません。 ※海外のイチゴは甘味がなくてまずいです イチゴこそメイドインジャパンの極みだと思います。 イチゴの挑戦事例もぜひ成功していただきたいと強く願っております。 個人的にはスナゴケを作るくらいの覚悟と野心がないと、わざわざ植物工場をやる意味がない気がします。 そのような挑戦ならたとえ失敗しても大きな意味があると思います。 もちろん今からスナゴケをやっても二番煎じで厳しいです。 スナゴケをやりましょうという意味ではなく、 スナゴケ生産のように新たな作物と可能性に挑戦しましょうという意味です。 全く同じものではなく、近いもの、たとえばギンゴケなどであればよさそうです。 ギンゴケは地球上で最も環境抵抗能力の高い陸上植物で、砂漠にも南極にも生息しています。 ギンゴケを使えばスナゴケが生育できない環境ですら緑化できるでしょう。 ただ、ギンゴケは成長が遅く、生産技術が確立していません。 そもそもミズゴケ以外のコケを利用しているのは世界でも日本くらいで、 生産している人はほとんどおらず、効率的な生産方法がよくわかっていません。 ちなみにギンゴケには地球最強の生物であるクマムシが住んでいます。 最も環境抵抗能力の高い最強の生物どうしの組み合わせですね。 また、ギンゴケの生産技術が確立されればホソウリゴケにも応用できるかもしれません。 コケの話をすると長くなってしまいますので、この辺で強制終了します。 最後に植物工場で最も手堅い作物である苗を紹介します。 植物工場は苗を作るためにあると言い切っていいくらい苗生産に向いています。 「あらゆる作物の苗」が対象になりますが、特に野菜苗が最適です。 野菜苗は露地では作れないのでハウスが必要になりますが、 植物工場で作った苗はハウスで作るより高品質になり、ハウスで作るより安定に生産できます。 栽培期間が短いので電気代も抑えられます。ハウスに負ける要素がありません。 さらに、ハウス苗と全く同じ値段で売っても利益が出せるので値段を無理に吊り上げる必要もありません。 苗が欲しい人を探して相場どおりの値段で売るだけでいいのです。 もしもレタス類を売るのと同じ労力を苗販売に回したら、いったいどれだけ多くの苗がさばけるでしょう。 本サイトでは極めて低コストなLED苗生産システムの作り方を公開していますので是非ご覧ください。 なにはともあれ、これから植物工場を始めようと考えられている方が本記事にたどり着いたとしたら 何かのご縁だと思います。 ぜひレタス以外の作物を一度真剣にご検討ください。 (タイトルの写真は和種ハッカという希少な高級ハーブです)

