■先に結論
植物工場では人類を食糧危機から救うことはできません。
人類の食料を賄うだけの穀物生産を行うには、世界中で使われているすべての電気を生産に投じたとしても全然足りないからです。
植物工場に過剰な期待をしている方には夢を壊すような話で申し訳ありません。
ただ、素人が考えるならともかく、専門家の中にも食糧問題と植物工場を関連させて話しているとんでもない人がいるので非常に問題です。知識が足りなくて本気で言ってるとしたら問題ですが、分かってて確信犯的に言ってるとしたらとてもまずいと思います。
■いったいどれだけの電気が必要か
10a(1000平米)の面積で600kgのコメを作るために必要な電力量を試算してみます。
18W、2100LMのLED蛍光灯が10aに少なくとも28000本必要(もっと必要な可能性がありますが)です。
120日×12時間照射とすると、必要な電力は
0.018W×28000本×120日×12時間=72万5760KWh
露地と単位収量(10aあたりまたはhaあたりの収量のこと)が同じだとすると、この電力量の投入で600kgのコメが収穫できる。
電気代は、業務用で1KWh20円とすると1450万円。
日本人は年間60kgのコメを食べる(食が多様化してもこの消費量であり、コメだけで酒食を賄うなら1.5倍には増えるであろう)ので、1人分のコメを作るためには7.3万KWhもの電力が必要。
1億2660万人分の米を作るには92兆KWhの電力が必要。
電気代がどんなに安くなっても1000兆円以上もかかってしまう。
これはとんでもない額で、国家予算の10倍以上。
それどころか、日本人の金融資産を全て投じても2年で力尽きてしまう。
コメを確保するためだけに。
ちなみに日本の年間消費電力は約1兆KWh。
植物工場で米を作るには、その90倍以上の電力が必要になる。
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仮に植物工場で作ることで収量が2倍になったとしても、
それでもなお45兆KWhもの電力が必要になる。
…
要するに、穀物は植物工場では作れないということです。
もちろん技術的には作れるけれど、経済的には決して成立しない。
なぜならば米をはじめとする穀物の栽培には10万ルクスもの強い光を必要とするためです。
植物工場で採算性のもとに生産対象になるのは、1万ルクス程度の弱い光でも栽培することができる、ごく一部の葉もの野菜だけです。
レタスを大量に作れば食糧問題が解決できるでしょうか?
いいえ。残念ながら植物工場で食糧問題を解決することはできません。
レタスをはじめとする葉物野菜にはカロリーがほとんどないからです。
テレビや新聞やネット記事ではなかなか伝えてくれませんが、植物工場はそれほど夢や未来のある技術ではありません。
植物工場に過度な夢を抱かず、冷静に前提条件を整理し、できることをよく考えて、ビジネスとして成立させる方法を考えることが必要であり、建設的なのではないでしょうか。
追記
植物工場で食糧問題を解決することはほとんど不可能ですが、「栄養飢餓」であれば貢献できる可能性はあります。
途上国の中には、カロリーは十分でもビタミンやミネラルなどの栄養成分が欠落している国民を抱えている国がいくつもあります。
このような「栄養飢餓」であれば、ビタミンやミネラルの豊富な野菜を植物工場で現地生産して供給することで解決できる可能性があります。
このような方向であれば議論の余地はあると思います。
追記2
本文に書いた通り植物工場で食糧問題へ貢献(要するにカロリー生産)することは難しいですが、私が思いつく限り一つだけ方法があります。それは野菜ではなく、糖分を豊富に含んだ高カロリーの微生物を植物工場で生産することです。それを「植物」工場と呼んでいいのかもはや怪しいところですが。

納得です。2年貸し農園を100平方メートル借りて、作物を育てました。
じゃがいもサヤエンドウネギタマネギミニトマトは豊作でしたね。
でも、植物工場では、その中でいうとミニトマト位しか実現できていない。
じゃがいもが育って初めてカロリーベースの課題が解決するのでしょう。同じナス科でもじゃがいもは難しそうだなあ。
サトウキビも非効率でしょうし。
天候が厳しすぎて、野菜が手に入らないシベリアや砂漠地帯に、簡易な植物工場を展開すると、栄養が補えますね。今のできる事から考えたいです。
以前より楽しく拝見しています。数字に裏打ちされた内容により理解が深まりやすく、納得をいたします。
現在、再生可能エネルギー周辺の仕事をしています。CO2の減少には化学的、物理的に固定化する方法、燃料化することなどがあります、また温暖化のカーブを下げる方法の一つには植物に「食べて」もらうことだと思っています。大事なのはその選択、方法ですね。
ところで中近東やモンゴルでの管理栽培は難関でしょうか?いつも何かできないかと考えていますが浮かんできません。豊富にある化石燃料を利用しながらの植物栽培!何かないでしょうか。工場にはこだわらなくてもいいかなと思っています。個人的なターゲットは大豆とジャガイモです、しかしどうも採算が合わない気がするんです。※時々はこのサイトを覗いて変化を楽しんでいます、コラムか何か開設してくれたらいいのですが。
食料工場は膨大な電力が必要で食糧問題には対応できないとは・・。
具体的に考えれば電力だけでなく食料を生産に必要な建屋、LEDの製造にも莫大な費用が必要になるね。
もし、九州の鬼界カルデラが噴火するような事態が発生すると東北地方まで噴煙が達するといわれてますので、噴火レベルによっては農作物の生産が数年?できなくなることもありうる。
そうなれば海外から大量の食料を輸入する以外になくなる。
物資の輸送手段は飛行機は噴煙で飛べなくなるけど船舶やトラック等で対応できるし、電力は太陽光発電による再生可能エネルギーは機能しなくなるけど原発や火力発電で対応できる。
そう考えれば潤沢な資金さえあれば鬼界カルデラの噴火でも日本存亡の危機は回避できそうに思える。
イエローストーンカルデラが大噴火を起こした場合、米国存亡の危機になるだけではなく地球規模で噴煙が広がるから世界的に食糧危機が起こる可能性がある。
核融合炉ができたとしても植物工場に供給できる電力を供給することは不可能なら人が生き残るためには光合成による植物工場ではなく、光ではなく熱合成みたいな新しい植物を成長させる技術を発明しないと人類は生き残れないのかも・・・。