■水耕栽培は簡単だけど高い
普通、植物工場は水耕栽培が採用されます。土に比べて水のほうがパラメータが少なくてコントロールしやすく、扱いが簡単なためです。
根菜類は土で作ったほうが簡単ですが、工夫すれば水耕栽培でも作れます。ただ、根菜類はものすごく価格が低いうえに栽培期間が長い=電気代が高いため、植物工場で作っても採算が取れません。土を使った栽培は屋外かハウスで行うべきです。
水耕栽培でできる作物は水耕栽培したほうが楽です。問題はコスト。安ければもっと普及するでしょう。
水耕栽培に最低限必要な要素を押さえておけば、要素を最低まで削り落としていくことで栽培装置を安く作ることができます。
廉価な植物工場を組み立てられる知見があるなら、廉価な水耕栽培装置も当然簡単に作れます。
今回の記事で出てくる装置だと、1000円でおつりが来ます。
いずれ200円くらいでネギやバラの水耕栽培装置を作る方法を紹介しようと思います。
※ちなみに植物工場ではなく水耕栽培装置です。光源はナシで、日光だけで育てるものです。
■水耕栽培は葉物が最適
根がある植物なら理屈上は何でも水耕栽培ができるはずです。私は胡蝶蘭を水耕栽培したことがあります。
最初に水耕に適応させるのがちょっと大変ですが、そのあとはもう本当に楽。年に10回くらい水を足すだけ。
それさえ忘れなければ毎年咲き続けます。
あの気難しい胡蝶蘭を栽培しているとは思えないほど楽でした。
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蘭は最も進化の進んだ植物で、本当に面白いです。蘭の話をしているとそれだけで何記事にもなってしまいそうなのでやめておきます。
ただ、最も水耕栽培と相性がいいのは葉物野菜です。実際、水耕栽培で商業栽培されているのもほとんどが葉物野菜です。
ほとんどが葉物で、たまに果菜(実物)と花があるくらいです。
■低コスト植物工場技術者による簡易水耕栽培装置
今年の初めくらいに手持ちの資材を組み合わせて簡単な水耕栽培装置を作りました。
スーパーで買った葉ネギの残り5㎝くらいの部分を水耕栽培にセットすれば再生させられます。
スーパーで売っているネギは、根が生きていればただ水道水に差しているだけでも一時的には増えます。
しかしすぐに根が腐って弱り、枯れます。
一方、水耕装置を使えばちゃんと再生して育ち続けます。
出窓の環境がいいのか、買った時よりはるかに高品質に育ちました。これを無限増殖と言って喜んでいました。
再生が成功してから2か月くらい経過した3月のある日、ネギ坊主ができ始めていることに気付きました。
ネギはなんとも不可思議な存在で、開花条件が整うと葉の先端が変化して花になります。
ネギは長日植物(※)なので、日が長くなって花芽形成のトリガーが引かれてしまったようです。
しかも台所で育ててるので何度も光中断(※)があり、余計に花芽形成が起こりやすい環境でした。
ともあれ、一年生植物は花が咲くと枯れてしまうのでもはや無限増殖ではなくなりました。
もしかするとネギ坊主を発見次第ちぎっていけば花も咲かないので枯れないのかもしれません。
ただ、本来は収穫された時点で死が確定していたはずのネギが、いろんな偶然の末に花を咲かせて生き延びようとしているのに、なかなかそれを摘み取る気にはなれません。
枯れても仕方がないので放っておくことにしました。
わかりにくいですが、画面真ん中のロウソクの比みたいな形をしたものができたばかりのネギ坊主です。
■ネギの種まき、芽ネギ、万能ねぎ
もうスーパー出身組のネギは有限増殖になったものとあきらめて、新たに種をまきました。
最初はこんなシャーペンの芯みたいなのが2か月くらいで葉ネギの太さになり、さらに2か月くらいしたら凶暴な長ネギになります。
もしもこの太さで収穫して種殻を取って食べれば、超高級食材の芽ネギになります。
以前も記事で書きましたが芽ネギは卸価格でキロ15000円くらいするので和牛よりも高い食材です。
これはだいたい国産マツタケと同じくらいの値段です。
芽ネギよりも高い作物なんてサフランくらいしかないかもしれません。(サフランはキロ100万円以上します)
ちなみに、福岡の「万能ねぎ」は最もブランド力のある葉ネギです。
ノーブランドの葉ネギよりも2-3割くらい高いですが、値段に見合う高品質です。
農作物が同じ作物と比べて他所よりも2割高く売れるなら、相当な高収益が期待できます。
かつて関東ではネギの緑色の部分を食べる文化がすき焼きくらいしかなかったが、万能ねぎが普及することで関東でも葉ネギを食うようになったらしいです。本当なら万能ねぎが日本の食文化や野菜消費にもたらした貢献度は絶大ですね。
■アルビノネギ
発芽したネギの中にたまたまアルビノ(葉緑体を作れない突然変異体)が1本だけ混ざってたので隔離して育てました。
種をまくと数千粒に1粒くらいはアルビノが出るようです。
葉緑体が少ないのでうまく育たないかもしれないが、育ち切って種が取れたら、その種からはたぶん白いネギが生えることになります。
純系にすれば品種登録もできそうですが、白い葉ネギなんてなかなか売れなさそうです。見た目はよさそうですが。
それこそアルビノ野菜ばかりそろえてブランディングすれば3割くらい高く売れるかもしれません。
ただ、アルビノ個体をうまく育てるとなると生産コストも3割以上増えそうです。
■バラの切り花に蕾
よく見ると、栽培装置の奥に挿し木していたバラも蕾がついていました!
品種は不明でしたがのちに「ローテローゼ」と特定しました。32年前にパテント(種苗権)が切れているので自由に増殖できます。
なぜこんなことになったのかというと、花が終わってもなかなか枯れずに葉が緑を保っていて、茎の切り口もぼこぼこしていたので、もしかしたら発根するかなと思って装置の余った場所に差しておいたのです。
1か月くらい経った頃に根が出ていたので再生が成功したことはわかっていましたが、まさかこんなに早く蕾をつけるとは思いませんでした。
ただ、装置があるのは北側の出窓なので光量がだいぶ足りない気がします。バラは強光ほど良く育つのです。
なのによくこんな環境で蕾を付けたものだと感心しました。
咲かせるのはちょっと難しい気がするけど、バラ自身は咲ける算段があって蕾を付けたのかもしれない。
以上、今年の3月頃の状況です。水耕装置の記事は継続しようと思います。
【解説】
・長日植物:光がない連続した時間(連続暗期)が一定時間以下になると花芽を作る植物
・短日植物:一定時間以上光がない時間(連続暗期)が続くと花芽(はなめ)を作る植物
※これらの植物は光を受けている時間の長さ(明期)ではなく闇にある時間の長さ(暗期)に反応して花が咲く。
長日・短日というより長夜植物、短夜植物と名付けるべきであったが、命名当時は仕組みがわからなかったのだから仕方がない。
また、植物の花芽形成は必ずしも暗期に左右されるわけではなく、小麦や桜のように温度によって制御されている植物もある。
・光中断:光を当てて連続暗期をぶった切る操作
・一年生植物:芽が出てから一年以内に花が咲いて種ができて枯れる植物。多年生植物は花が咲いても枯れずに一年以上生きる。
